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2004年10月29日

明日ジャズ8:枠から飛び出そう

伸び悩むあなたのために。

明日のジャズマンのために その8:
 枠から飛び出そう

ジャズをやっていて最初にぶつかる壁は、どうやってアドリブをすればいいのだろう?という疑問。そして次の壁は、アドリブがなんとなくできるようになったけど、どうやったら新鮮なアドリブができるようになるのだろう?という疑問です。

いずれの場合も、「枠から飛び出す」ということが大事。

一回目の枠から飛び出すのは、譜面として存在するテーマのメロディーから抜け出すところです。楽譜を追うことしかやったことがないと、譜面から脱線する行為はかなり難しい。でも、誰しも一度はやったことがあるはず。それは、「でたらめ歌」を歌うことです。

でたらめ歌とは? 小さい頃、無意識に鼻歌でフンフンフンと、何の曲をプレイするでもなく自由に歌ったことはありませんか?決まったメロディなんてどうでもいい、でもなんとなく曲を歌っている。それを、ジャズの曲のコード進行に対して、やるだけです。その鼻歌から出てくるメロディを、鼻からでなく自分の楽器であるサックスやピアノで出力すると、アドリブになります。

当然、完全な「でたらめ」だとコードとぶつかりまくって、ただの雑音、不協音になります。だから、最初はメロディを弾きながら、徐々に崩せそうな所を崩します。頭の音符、フレーズの途中の音符、曲の終わりの部分を無難な範囲で変えます。どんどん変える量が増えていくとアドリブ度が高まりますが、メロディを変える量を増やす為にコードやスケールを少しずつ学んでいけば、無理なくアドリブ量を増やすことができます。

コードやスケールはジャズのアドリブをするための充分条件ではなく、必要条件です。それだけ知っていてもしょうがないですが、理論的にも正しく聞こえるアドリブをする為には勉強が必要です。いわば、枠から飛び出すために、枠の形を勉強することが、1回目の枠から飛び出す行為。

二回目以降は、幾度となく繰り返される枠からの脱出行為です。一定のレベルまで自分のアドリブが達すると、それ以降にっちもさっちも進まなくなります。ジャズの上り坂を登っていたのに、ある日突然踊り場に達し、平坦もしくは下ってしまい、暫くそこから上がれません。メロディの枠は飛び越えたものの、今度は「自分のアドリブ」という枠にぶつかってしまい、どうやってそれを超えればいいのか判らなくなってきます。日々同じ曲をやっていると、気づいた時には毎回同じところで同じフレーズのアドリブをやっている、これってアドリブというのか?それともただのマンネリか?マンネリです。「アドリブって楽しいと思ったけど、つまんねぇな」と考えるようになります。

この枠は思ったよりも強力で、短い時で数日、長い時で数ヶ月思い悩みます。自分のアドリブの限界、表現力の限界はこんなものか?と。これ以上頑張ってもオスカーやジャマル、マイルスやジョンソンのような独創的かつ魅力的なフレーズは出せないかも。そうやって日々悩みます。そんな時は、暫く楽器を全く触れないといい結果が出ることがあります。

楽器を2週間触れないで、ただ毎日CDを聞く。そのCDも、いつも聞いているお気に入りのテイクやミュージシャンではなく、全く別のミュージシャンやジャンルを聞く。例えばオスカー・ピーターソンに没頭していた僕は、しばし伸び悩んだ時に全く対極的なピアニストであるキース・ジャレットのCDを2週間聞きつづけました。それで学んだのは、オスカーが取っているフレーズのアプローチだけでなく、バッハ等のバロック音楽的なアプローチも「許される」ということです。

ジャズなので何をやっても「許される」というのは当たり前ですが、暫く自分のジャズをやり続けるとそれ以外のジャズが許されないかのように錯覚し、自分自身で枠を狭めてしまいます。そこであえて極端に違うプレーヤーや、いきなり椎名林檎を聞いたりAIKOを聞いたりカーペンターズを聞いたりと今までの枠と違う枠を知ることによって、自分に課していた枠が取り払われます。心機一転、もう一度楽器に向かうと、知らず知らずのうちにバロック的なフレーズが出てきたり、70's pop music的な判りやすいフレーズが出てきて、「なんだ、ジャズってなんでもありなんだ」とジャズの幅広さを再認識します。この、ジャズの幅広さ、無限の広がりを定期的に認識することが、2回目以降の枠から飛び出す行為です。

行き詰まった時は、リセットしよう。
明日のジャズメンよ、大志を抱け。


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おまけ。今日のジャズピアニストにお勧めCD:
 Keith Jarrett Trio 「Still Live」

 still-live.jpg
Keith Jarett/Still Liveshopcart.gif

 Keith Jarrett (pf)
 Gary Peacock (b)
 Jack DeJohnette (ds)

バンドやセッションを通じてジャズのスタンダードを弾き終わった3年生の頃、自分のアドリブがどんどんマンネリ化してつまらなくなり悩んでいた頃に出会った2枚組CD。キース・ジャレットはライブ中にピアノから立ち上がったり「イー イー」という甲高い声を出すという、変なイメージを持っていたので聞かず嫌いだったのだけど、キースが東京公演をしたのを後輩が聞きに行き「凄くよかった!」と言っていたので聞いてみたら度肝を抜かれた。元々フリージャズ系の演奏からスタンダードをやるようになったキースらしく、その演奏は自由自在。同じ枯葉、Song is You、My Funny Valentineでも、イントロからエンディングまで全てが独創的で、自分が弾いているのと同じスタンダードとは思えなかった。これをきっかけにもう少し自分の枠が広まり、踊り場での足踏みから脱出させてくれたアルバムです。

投稿者 g_nagata : 2004年10月29日 01:14